午後6時。男性が別人に化する。その才能は素晴らしい。
オフィスでは決して見せない人格。
部下を含め、誰もが真面目だけが取り柄の上司だと思っている。
ジョークも言わない。無駄話もしない。
エロスとは無縁の男だと。

体育会系所属、超一流大学卒業後、誰もが知る超一流企業の社長専属秘書。
海外駐在も長かった為、それなりに色々経験してきた。
酸いも甘いも。
今となっては筋肉も落ちたが、
ジムにも通うようにしている。
どんなに3枚目をきどっても、お坊ちゃん育ちの品格は、
身体の隅々からにじみ出ている。
もちろん妻も子供もいる。当然だ。
一般的に男前だと自覚もある。

アフター6。女性を狙う野獣スイッチが入る。
帰宅のデッドライン、AM2時までは、セクシャリティ、
エロス、官能気分の赴くままに、
どのように使っても良い自由な時間。
どこからともなく、黒い羽根が生える。
もちろん女性には見えない羽根。
女性から見えているのは、紳士でスマートな「いい人」。

男がきれいな女性をものにする為にあらゆる手をつくす。
絶世の美女こそダメ元で狙いをさだめる。
きれいと言われ慣れている女性には、敢えて「かわいいね」って言ってみたり。
ひとしきりの楽しい時間を求める。
「今夜はあるかもしれない」
という官能の妄想が常によぎる。
ダメならダメで良い。
家に帰宅すればよいだけだなのだから。
一気にお酒を入れて、気持ちよくなる。
人生でお酒なしで、女性と関係をもったことはない。
なぜだろう。一気にあの頂点まで達することが出来る。

男は6時以降も仕事という名の口実が続く。
上司、取引先との会食が毎日続き、
どんなにお腹がいっぱいでも、酒を入れ続ける。
その後、彼女と合流し、勢いのまま口説き、
エロティックな関係を成立させる。
そしてこの日の男の仕事が終了する。
それは、結婚していても子供がいても変わることはない。
月曜日から金曜日まで、
上司と取引先との付き合いを続ける。
一生。
本当は辛いんだよと言いながら。

今夜も「あるかもしれない」夢を追って、
男と女の駆け引きが繰り広げられる。