彼は言った。愛してるの反対は、大嫌いじゃないよ。
「愛していました」

彼に認めてもらうためにいつも頑張っていた。
「愛してる」と口にすると男はみんな逃げていく。わかっていても愛してると言い続けた。
ベッドの中で彼はいつも答えてくれる「I love you more」
彼は私の頭を撫で続ける。
どんなに幸せでも、昔から私は1番最悪の事態を想像してしまう。
現実になった時に、傷つかなくていいように。
でもそういう考えがある時は、現実となるのだ。

あの頃はよく泣いた。
泣くふりもよくした。
場所もわきまえずに。彼の会社の前で待ち伏せまでもした。
よくわからない不安に押しつぶされそうだった。ただの愛情表現のおしつけだ。
あまりに情熱的な女は怖い。そんなことはわかっている。

冷静な女性が好きといいながら、私を不安な気持ちにさせるのはあなた。
いつも私を取り乱させるのはあなたじゃない。
でも男はその女の不器用さを見るのが好きだ。
傷つけて、落ち込ませて、慰めて、き麗だよと褒める。
女心を操るテクニック。私はいつも負のループに引き込まれる。

最近は泣かなくなった。恋を忘れている証拠かな。
あの時の方が、人間らしかったな。
どんなに彼の事が好きでも、素直になれない、あまのじゃく。
愛してるも言わなくなった。
今はベッドルームから遠ざかる彼を冷静にながめている。
あの時の彼の言葉が未だに記憶の中に刻みこまれている。